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連載小説 「壬之御門奇譚(おおいのみかど きたん)」 Act.1 #18
更新日/2023.04.04
「正直苦手です…なので雅さんが良ければ最初だけでもいいのでこ、こうして迎えに来て一緒に帰っていただけると嬉しいです。」
「教えて下さってありがとうございます。それではそう致しましょう。ご友人が出来た際にはご友人と帰ってくるという方法もございますので、私が迎えに行くことが必要な際は端末に私の連絡先が入ってございます故そちらに連絡いただければご帰宅の時間は開けておきます故いつでもお迎えに上がらせていただきます」
「ありがとうございます。助かりますし心強いです」
些細なやり取りでさえ心が温まり、幸せな気持ちになり雨で憂いに呑み込まれそうになるがそれさえも掻き消すようなそんな初日だなとこれが幸せなのか?とまだ疑問形であれどそうなのかもしれないと思わせてくれるようなそんな毎日の訪れを知らせるような始まりの日だと思った。
「ここから中庭になります。濡れては大変ですので傘をおさしください」
二本持っていた傘を楓花に一本渡すとありがとうございますと言って軒下で傘をさして傘の中に入り少ない小階段を数段駆け降りると桜が雨に濡れてどこか幻想的な雰囲気になっている少し椅子やベンチ、そしてガゼボがある中世の庭園を思わせるような和洋折衷が美しい庭園が広がっていて背筋が美しさのあまりぞわっと逆立つが水面で自分の姿が反射している中庭の道へと一歩ずつ歩みを進める
「この桜の木は変異種でして、年中このように咲き誇っています。周りの花や植物は季節によって変わります。ガゼボや中庭はいつでも利用可能になっておりますのでご自由にお使いください。」
「ガゼボってお茶会をしたり雑談に利用してもよいのですか?」
「勿論です。天や冥はコミュニケーションをより高品質なものにするためより良いものするためそして皆様に楽しい学校生活を送っていただけるようにとこのガゼボを作られました。お茶会は一見お茶や茶菓子を用いて楽しむものとばかり思われますがそれよりも大切なのはコミュニケーションが交互に交わって楽しく続くことだと思うのです。故にご自由にお使いください。」
「ありがとうございます…そうします。雅さん、目の前に見える上弦の月の照明が幻想的なあの屋敷が寮ですか?」
まっすぐと足を進めていると目の前に竹林の道あり、足元に等間隔で角行灯が置かれている先に上弦の月がかたどられた照明が特徴的な和風のホテルの様な建物がありそこを指さして雅を見つめると頷きながらご名答です。参りましょうか?と聞かれて喜びとワクワクした気持ちが高まって強く深く頷くと雅が先に扉の目前に立ち扉を引いて開けお礼を言いつつ中に入って自動の扉が楓花を感知してすうっと音を立てて開くと月の満ち欠けをイメージした白を基調とした旅館の様な建物が広がっていて雅が受付の方に行く背中を追いかけてついていくと受付の優しそうな黒髪の女性と雅が互いに挨拶を交わす
「お帰りなさいませ、雅様ご機嫌いかがですか?」
「変わりありません明佳さんもご息災であらせましたか?」
「ご心配感謝いたします。私は変わりありません。ありがとうございます…所で後ろの可愛らしい女性は件の新入生の方であらせますか?」
興味のありそうな顔で口元に手を添えながら楓花を見る明佳に微笑んで頷きながら体を引いて明佳に楓花が見える位置に移動する
「こちらが、私が担当させて頂く高等院新入生の朝霧楓花さんです。」
「は、初めまして朝霧楓花です」
緊張で小声になる物の頭を下げて挨拶するとまあまあと言いながら受付から駆け寄って楓花の手をぎゅっと握る
「ようこそ、おいで下さいました。私は上弦堂の受付をしております。明佳庚と申します。お会いできるこの日を楽しみにしていましたわ」
「こらこら庚距離感が近い…すまないねお嬢さん、なれは同じく上弦堂の受付兼観察をしています。刑部統児です。以後お見知りおきを」
「感動の対面の最中申し訳ありませんが、楓花さんをお部屋にお連れしたいのです。案内をお願いできますか?」
「えぇ、勿論ですわ…それでは参りましょうか?」
楓花がお願いしますと微笑んで言うとかしこまりましたと目を光らせて言いながら楓花の隣に立って説明を始める
「お嬢様のお部屋は入ってきて右側の廊下に向います。それでは一緒に行きましょうか」
頷くと少し床が滑りやすくなっておりますお気をつけて移動しましょう。そう言ってどこか艶のある大理石でできたような床をかつかつと靴音を立てながら受付から右の廊下へと移動すると少し薄暗い廊下に差し掛かって月の満ち欠けが綺麗に描かれている照明や幻想的な絵画、そして左側には新緑が萌えるように彩る中庭がありその美しさは目に入れても痛くないほどだった。
→→→ #19へ続く