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連載小説 「壬之御門奇譚(おおいのみかど きたん)」 Act.1 #21

更新日/2023.04.14

雷鳴が大地を穿ち、空を覆いつくしすべての時間と内と外側を遮断する

生徒たちの声はにぎわい華やかで全ての心を躍らせ、口元に笑みを浮かべ寮の廊下では会話の花が咲き学年問わずに会話が繰り広げられ、夕闇が全てを呑み込み覆い、瞬く間に朝が訪れを告げ、泡沫の眠気が覚めて布団の温かさの恋しさが残るものの布団の体から引き剥がし、制服へと着替えて、外側へ無造作にはねた髪を整え、髪飾りで一つにまとめ、靴の音を響かせて姿見の前で一回転してくるりとスカートが揺れ、気分が高鳴り口元に笑みが一つ。部屋を見渡してここに来たと今日から学生なのだという自覚を改めて感じ、靴をクローゼットの戸を引いて横に流して取り出し、両手で持ち、部屋に行ってきますと告げ踵を返して扉を開き、静かに閉めると扉の模様や扉が白亜の壁へと静かに消えていき跡形もなかったように無へと帰して鍵の音が閉まった音がする。

「おはようございます。楓花さん」

後ろから声が聞こえて肩をビクッと揺らす。足音一つ聞こえなかったのにいつの間に来たのか?いつからいたのか?と頭の中で疑問が生まれる者の「左右に頭を振って煩悩をかき消して馴染んだその声がする方へとスカートが当たらぬように一歩後ずさって振り返る

「おはようございます雅さん」

返事をすると優しい微笑みが降ってきて歩きながらお話ししましょうとの声に頷くと一歩ずつ靴の音を朝の静けさが残る廊下に歩幅合わせ、肩を並べて靴の音を響き渡らせる

「お加減はいかがですか?昨日はよく眠れましたか?」

「少し緊張して部屋があまりにも綺麗で、初日だったのに先輩方や同級生たちとも話せて興奮で気分が上がってしまったけれど、久しぶりによく眠れました。体調も特に何も異常はありません。」

「お加減が良くて安心しました。それともう上級生や同級生たちとお話しなさったのですね」。

「自分もかなり驚きました。まさか初日なのにお話して頂けるとは思っていなかったので・・・」

「楽しかったですか?」

「えぇ、とても今までこんな事がなかったので・・」

昨日の部屋に入った後の事を思い返すと自然と心が温かくなって口元に笑みが零れ、その表情を見た雅は少しばかり仰天していたがすくに楓花から移ったかのように表情が優しさに包まれる

「楓花さんの笑顔が朝から見られて雅は幸せにございます。」

「雅さん優しすぎですよ・・・それよりもこれからどちらに向かわれるのですか?入り口とは別の方向の廊下に来ましたが」

「まだお知らせしておりませんでしたね。これより朝食をお召し上がりになる。食亭に参ります。朝食の方式ですが、基本的にホテルなどである、ビュッフェ・バイキング方式かメニューが数多沢山ある中より選ぶ方式か、御前・定食方式の三通りに分かれております。基本的に和洋中韓など他にも数多の国の食事が用意してございますので好きなものをお選びください。またご飯や味噌汁、サラダ等お召し上がりになる朝食の量はご自分で調節できるようになってございます。勿論おかわりも自由です。座席に関しても指定はございません故にお好きな所でお召し上がりになってください。」

「ほ、本当に凄いんですね・・・学校もそうですし、ご飯やお部屋に至るまで」

「私も最初は驚きましたが、衣食住の中で最も大切なのは食なのやもしれません。食事の質で体系や精神的幸福感に至るまですべてが変わります。特に食事はその日のパフォーマンスやエネルギー量に至るまですべてを左右するものです。勿論食事はコミュニケーションの一つとしても大切になります。食事は誰かと共に卓を共にするとそこから新たなコミュニケーションが生まれ関係が深まったり、仲が親密になる事も稀ではありません。故に天は誰しも平等に楽しく幸せに食をきちんと摂り、卓を囲んでコミュニケーションの花を咲かせ、深め、互いに縁を深めて欲しいという願いを込めたのです。それが天や冥の願いです」

「誰しもが・・・理想的ですね」

「その理想や夢、目標が人々を動かすものでもあるのです・・・話していたらあっという間に着きましたね・・こちらが食亭になります」

 

→→→ #22に続く

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