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連載小説 「壬之御門奇譚(おおいのみかど きたん)」 Act.1 #22

更新日/2023.04.18

そう言いつつ格子状の扉を横にカラカラという音を立ててスライドさせると食欲を誘い煽る香りと木の香りが奥からふわっと香ってきて一気に空腹感が増して食欲が増すと中から華服を着たほうじ茶色の髪をした女性が手を振りながらどこか駆け足で近寄ってくる

「早上好!(おはよう)雅!欢迎光临(ようこそ)」

「早上好。到你。(シンイー)いつもすまないね」

「别担心!(気にしないで)これが私の仕事だから!おいしく食べてくれたらそれで満足!それよりも隣の可愛らしい子は何方?」

「こちらは朝霧楓花さん。私が担当している新入生だよ」

「この子が噂の!很高兴见到、違う違う初めまして!私は上弦堂内食亭で女中をしてます。王到你です!気軽に我得到了它って呼んでくださいね!」

そう言いつつ両手を袖の中に入れてぺこりと挨拶を太陽の様な笑顔でするその姿に見惚れてしまっているときょとんとして顔がぐんと近くなりそこで我に返る

「大丈夫です?私の顔に何かついていましたか?」

「ち、違います!失礼しました・・綺麗だなって見惚れてしまって」

「もー!新入生ちゃんてば言葉がお上手です・・・お姉さんやる気出ちゃいます!それよりもここで話すのもあれですし、席にご案内いたします!どこか希望の席はありますか?」

「そうだな・・・窓側の縁側の席空いてるかい?」

「当然!(勿論)ご案内しますね!どうぞ!二名様お通し致しま~す!」

そう言いながら腰につけているベルトの中から鈴を揺らし館内に響き渡らせるといらっしゃいませやおいでませという声が聞こえてきて、それだけでも心が弾み、到你の後に続いて館内の奥へと進んでいくと、庭を前にして座席が二つとガラスが透き通った円卓が一つあり、こちらへどうぞと言いながら椅子を後ろに引き、そこに感謝の言葉を一つ添えてぽすりと座ると体にフィットした一度座ったら離れたくなくなるような座り心地だ。向かいに雅が座ると円卓の中心側に袖の中に両手を入れた到你が微笑んで立つ

「今回は食亭をご利用いただき誠にありがとうございます。今回はいかがなさいますか?」

「そうだなぁ・・・おすすめは何かあるかい?」

「本日のおすすめはビュッフェ方式の焼き立てのパンの食べ放題でございます。新作のパンに加えて冬のビュッフェメニューから春に移行しまして!ラインナップも一新して新たに変わりました!パンや小麦が苦手でなければいかがですか?」

「それにします!」

「では、私もそれでお願いできるかい?」

「我得到了它(かしこまりました)!それではビュッフェエリアは左手側にございます!そちらにトングと大きさの分かれたお皿がございますのでご自由にお使いください!」

「ありがとうございます到你さん」

「それでは私はこれで失礼しますね!分からないことがございましたら、そちらにある鈴の音を鳴らしてください」

そう言い終えるとコツコツと靴の音を早く鳴らしながら入り口の方へと戻っていく雛鳥の様な姿をどこか微笑ましく見守り、椅子から立ち上がって雅と共に色とりどりのパンの中から二種類選び白亜の綺麗な装飾が施された中くらいの菱形の皿に並べ、お供として春野菜が彩るコンソメスープをスープカップに入れて席に着き、雅を待つと多くのパンを大きな皿に並べた雅が現れてどこか感じていたギャップとは違う一面に開いた口がふさがらなくなるものの一瞬にして口元から吹き出すような笑いに変わり、雅はどこか恥ずかし気にお皿を無音でテーブルに置いて静かに頭を搔きながら座り、手のひらを合わせて目を瞑り頂きますと声が重なり、目を開き、パンをちぎっただけでもわかるバターの香りのよさと、感覚でわかる柔らかさを口に運ぶと美味しさのあまり目を見開いて語りたくとも語れない程の味と触感に悶絶している楓花と黙々と数多の種類のパンをもぐもぐとリスの様に頬を膨らませて食べる雅が並び、通りかかった到你が幸せそうに二人を見守る

→→→ #23へ続く

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