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連載小説 「壬之御門奇譚(おおいのみかど きたん)」 Act.1 #5

更新日/2023.02.17

その表情を見ると気分が高まり頷いて神楽が来訪の知らせを告げるノックを三回高らかに鳴り響かせるとどうぞお入りくださいと電話した時に聞こえた声が聞こえてくる手のひらをぎゅっと握りしめて失礼します。と少し大きめの厚めの木の扉越しにでも聞こえるように声を鳴らすと神楽が扉をゆっくりと引く。

「ご武運を。貴方の成功をお祈りしています」

「ありがとうございます神楽さん」

小声でそう言って中に入り右側に曲がって奥へと進むと一つだけ高そうな椅子が置いてあって目の前に優しい雰囲気で大人っぽい女性が二人とどこか怖そうだが優しそうな雰囲気と凛々しさを持ち合わせている男性が二人座っていた。椅子の目の前に立って一礼をしたのちに少し震える唇を開く

「朝霧楓花です。今日は宜しくお願いします」

「ようこそ、壬之御門要塞都市へ、お会いできるのを楽しみにしていました。どうぞおかけください」

そう言いつつ手を椅子へと差し伸べられるとありがとうございます失礼します。と言い終えて椅子に浅く腰掛ける

「今日はよく来てくださいました。改めまして自己紹介をいたしますね。壬之御門学園学校長を務めています。神来社鏡花です。」

「壬之御門学園教頭を務めている神来社左京です。」

「壬之御門学園人事担当の桝鏡暦です」

「そして壬之御門学園事務担当の神来社朔です」

「よろしくお願いします」

「では自己紹介が済んだところで面接に入りましょう…朝霧さん貴方はどんな学生時代を過ごしてきましたか?どんな事であれ我々は受け入れますし、暗いことでも受け入れます。ただありのままを話してくれますか?」

「私の学生時代はいいものではありませんでした。青春というものはありませんし無縁でした。いじめと暴言と暴力それが毎日で担任の先生方も止めることはなく傍観しているだけでした。何度か初めの時は助けを求めました。ですがこの学校にいじめなどないと、ありえないと信じて貰えずいじめた人ではなく自分が叱られました。なので先生に頼ることはできなくなり自分一人しかいなくなりました。誰も寄ってこず最初仲が良くてもいじめられたくないし標的にされたくないからと皆離れていきました。それでも学校には嫌でも毎日通い続けたし、存在否定とでも思える言葉は毎日投げ捨てられ続けてきました。でも休むことは一日たりともありませんでした。」

「貴方が学校生活で望むことはなんですか?」

「私が望むのは…普通の学校生活です。いじめられることはなく、叶うことならばもしも願ってもよいのならば友達やクラスメイトと一緒に楽しく学んで話してそんな些細な幸せが日常的に本来ある筈の幸せを望みます。」

「ありがとうございます。続いて学校行事はどうでしたか?」

「参加したくなくとも参加せざるを得ませんでした。基本的に出された種目は強制で個人の意見は通用しなく聞き入れてもらえませんでした。ただ単に入れられただけでした。修学旅行や卒業遠足も基本的にどこにも入れて貰えず、単独行動で行動していました。基本的に何かの意思決定に自分の意思などありませんでした。何度も自分もそのグループの中に入れてくれと願ったことがあります。ですが全部無視されました。その結果があってから一人で回ったり過ごすようになりました。」

「ありがとうございます。続いては貴方自身の事についてお聞きしたい。好きなことや趣味はありますか?」

「好きなことは、楽器を演奏したり歌うことと趣味は音楽鑑賞とデザインをすることです」

「楽器を演奏なさると言っていましたが、具体的には何を?」

「縦笛と琴を幼少のころから演奏しています」

「すごいですね…ご家族でだれか演奏している方がいらっしゃるのですか?」

「恐らく母がしていたんだと思います…物心着いたころからどちらも家にあったので」

「成程…得意教科と苦手教科は何ですか」

「得意教科は、音楽と文系統で苦手なのは理数系統です。」

「ありがとうございます。次に人間関係の事について聞きたいです」

「一人でいるのと集団でいるのはどちらが楽だったりするとかありますか?」

「正直一人でいる方が周りに気を遣わずに楽ですが本音を言うとみんなで会話をしたり雑談を交えたりできる方が楽しいです。」

「人間関係で躓いた事はありますか?」

「躓いた事は、多くありますが一番は距離感やパーソナルスペースを人によって考えたり変えたりすることが苦手です。それで人間関係が崩れたりすることが多かったです」

「教えて下さってありがとうございます。きちんと言葉にして自分の過去の経験談も交えつつわかりやすく伝えられる力がありますね」

「ありがとうございます」

「それでは、続いて家庭の話に移ります。ご両親は普段家にいますか?」

「いません。父は離婚していません。母は毎日仕事で家にいたとしてもいないに等しいです。」

「お母様にお休みはありますか?」

「自分が学校に行っている間です。家に帰っても基本的に寝ています」

「成程、それでは家事は基本的にだれがやっていますか?」

「私がやっています。基本的に全般自分がやっています」

「学業とともに家の事まで…しっかりされているとはいえ大変ではありませんか?」

「…怒られるのが嫌なのできちんと自分がやらないと…やらなかったらどうなるのかわからないので…」

その言葉をうつむきながら言うとそれぞれにペンやキーボードをカタカタと打っていた手がぴたりと止まり。コツコツときれいな靴の音が聞こえてきて恐る恐る頭を上げる

「朝霧さん。この学院に入学したら基本的に全生徒全寮制になります。貴方はどちらを望みますか?入学したら基本的に卒業するまでこの要塞からは出られません。出られない代わりに貴方には今までの人生よりも絶対の幸せと楽しい学生ライフを約束できます。すべては貴方の選択次第。誰も貴方を縛ることはありません。縛るも縛らないも貴方の意思一つでどちらにもなるのです。」

初めて決定権も与えられて喉が急激に締まって痛くなって声が出なくなる。とてつもなく熱くて痛い喉がかれたより乾燥で声が出なくなったよりも痛い。痛い痛い痛い痛い痛い

痛くて溜まらないそちらに意識も気も持っていかれそうになるが肩をポンっと誰かに叩かれてその瞬間に喉の痛みが何事もなかったかのようにスゥっと消えていくが肩を叩いたであろう人物は誰もおらず答えをまっすぐ前を向いて言う。虚空の空を切り裂いたような曇天を太陽が照らしたような感覚で言い終えると鏡花の口元が弧を描いてこくりと瞼を優しくされど深く閉じて頷いた。

「ありがとうございます。本日の面接はこれにてお開きとします。結果は後日御伝えさせていただきます故お待ちください。」

はいと空気を切るようにはっきりと言うと椅子から立ち上がる

「今日はありがとうございました。失礼します」

そう言って頭を一番深く下げて三秒ほど止まり振り返って扉が開かれてそのまま出ていく

瞬くような短い時間だったが十分に内容が深く数時間ほどいたような感覚だった。扉が後ろで重々しく閉ざされてそのまま来た道をたくさんの鳥居をくぐり終えるとなんということなのだろうか家の目の前に着いていた。制服のポケットから鍵を取り出してガチャリと開いて扉を引くとそのまま靴を脱いでシューズボックスに入れて重々しい体を無理やり動かして部屋に着くと疲れが一気に来たせいかそのまま意識が遠のいた。

→→→ #6へ続く

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