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連載小説 「壬之御門奇譚(おおいのみかど きたん)」 Act.1 #23
更新日/2023.04.21
「意外でした…雅さんが結構な量を食べるとは…」
「…昔から自他ともに認める大食いでして少しお恥ずかしい限りです」
「恥ずかしいだなんてそんな!美味しそうに食べてらしたではないですか!きっと作ってくださった方も喜んでらっしゃると思います。作る側はおいしそうに食べてくれるのが一番の喜びであり幸せですから」
「!…そうですね…ありがとうございます楓花さんその言葉に救われました」
「?…どういたしまして?」
ほっとして微笑む雅の言葉と行動が理解できない楓花は頭の上に疑問符をたくさん作ったが話が弾んでいる間にも時間は過ぎて食べる手も同時に進んでいきあっという間に食べ終わり、腹八分満たされたその幸福感で全てが満たされ口元も感情も明るくなり手を合わせてごちそうさまでしたと終わりを告げて立ち上がり来た方へと足を進めるといろいろな制服や髪色、目の色や個性を表現した人々のにぎわう声や多種多様の表情が行き交い、食事したことを記録として残す来場確認の列を見つけてそこで雅と隣り合わせに並んで待つ
「聞いたか?転入生の話」
「聞いた聞いた転入生なんて異例じゃないか?それ本当の情報なのか?」
「多分本当らしいがどこの学年とクラスに配属されて性別はどちらかなのかとかどんな人なのかまでは不明だ」
「さん…楓花さん」
名前を呼ばれるその声にはっとして左側へと顔を向けると心配そうな顔が一つ
「大丈夫ですか?どこか上の空でしたが…?」
「だ、大丈夫です!…ちょっと聞こえてきた話が気になっちゃって…」
聞こえてきた話というワードが引っ掛かったのか眉間に皺を寄せて顔をしかめたが長蛇の列を見て表情が普段の顔に瞬時に変わりその切り替えの早さにビクッと肩を揺らす
「ひとまず、ここを出ましょう…話は移動の最中にお聞きします」
こくんと一つ頷きで返すと水晶盤を出してくださいと声を楓花にかけて取り出した水晶盤を来場確認証と書かれたモニターの中心にはめるとぽわぁっと優しい光が灯りモニターにクラスと学年そして自分の名前が表示され、ご本人様で宜しければこちらを押してください。とボタンが一つそこをタップすると確認が完了しました。と表示され明かりが徐々に消えて水晶盤を取り出してくださいと言う無機質なアナウンスと共にモニターの下側からカードが出てきてそれを取り出して、食亭を出た廊下の先に待っていた雅の元へと少し速足で追いつき水晶盤と出てきたカードを胸ポケットにしまって一息つくと止めていた足を互いに進める。
→→→ #24に続く