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連載小説 「壬之御門奇譚(おおいのみかど きたん)」 Act.1 #27
更新日/2023.05.09
丸眼鏡を左手の人差し指でくいっと上げて微笑みとどこか懐かしい落ち着いたお茶の香りを一つ残して教室を後にする姿を開いた口が塞がらなくなって頭が反転したかの様に回る思考とぼーっとしている表情で矛盾が生じていた
「朝霧ちゃん大丈夫…?」
「先生みたいな方が今までいらっしゃらなかったので…ちょっとびっくりしてしまって」
「無理もないさ…現実では数多の人間がいる。偉人の子息だなんて簡単に巡り合えるわけもないのに、今こうして目前に担任としているのだから」
「縁とは奇なものですね…なれど面白いものです。いつ誰にどこで会って、円が結ばれきれるのかそれは誰にもわからない故に人間とは面白いものです」
「故に縁とは大切にしたいものだ…こうして初日から何億人の中から巡り合えてこうして言葉に乗せて声にして発しているのだから」
「良いこと言うねぇ…普段人と喋んない癖に…」
「うるさい放っておけ」
横目でじーっと見ながら口元をニヤリと歪ませて笑う幸鳴の頭をかすめるようにうっとうしそうな顔で叩く彷徨に微笑ましさとどこか少し羨望という感情が湧いてどす黒い感情にのまれそうになるが左手をぎゅっと暖かな手で包まれる
「こうしてお近づきになれたのもなにかの縁。そ、その校内案内やこれから先ご一緒しても?」
「!…ろ、六條さんが良ければ是非!」
暗闇に差す明るい日の光、いや光の矢が胸を穿つ感覚の様で胸がほんのり温かくなって今までにないような笑顔で返すとまあまあ!と言いながら雰囲気がガラッと変わり子供が宝物を見つけたかのように若紫色の瞳を輝かせて喜ぶ二人の方がずんと重くなり、肩に乗ったであろう腕を鞘が振り払う
「俺も混ぜてよ~!」
「いきなり女性に気安く触れてはならぬと教わりませんでしたか?明時さん?」
「こらこら、喧嘩しない。そして幸鳴ももう少し距離感考える事それと出会って間もない女性に気軽に触れてはならない。これは約束してほしいけれど如何かな?」
「…善処します」
「宜しい。考えてくれるだけでもうれしい限りだよ。さてそれでは校内案内を始める為にここから移動するから二列になって並んでくれるかい?」
そう言いながら入り口の階段とは反対側の溝に桜雅が水晶盤を取り出しながら溝にはめて水晶盤を左側に回すと壁から模様が浮かび上がってトンネルの様なアーチ型の扉が現れてその入り口の中心を背にして軽く手招くと楓花達四人組が少し駆け足で一番乗りと言わんばかりに桜雅の前に並ぶとまばらにそのあとに続く様に生徒たちが並ぶ
「それでは行こうか?皆はぐれないように付いてくるように」
→→→→ #28へ続く