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連載小説 「壬之御門奇譚(おおいのみかど きたん)」 Act.1 #26

更新日/2023.05.02

どこか独特の違う世界にいるような雰囲気を醸し出しているセーラー服と羽織をかけあわせた制服を纏った鴉羽色を長髪の大人びた面立ちの少女が立っていた。立っているだけでその場の雰囲気に緊張感が走るほどの今までにないその世界観に息をのむ

「良いが…その前に名前をお聞きしても?」

「自己紹介が遅れてしまいご無礼を致しました。姓を六條、名を鞘と申します。」

「六條か…私は」

「名乗って頂かずとも承知しております。物部さん、明時さん、そして朝霧さんでございますね?」

「え、あぁ…はい」

呆気に取られて返事が咄嗟に出た言葉になってしまった幸鳴ににこりと微笑み返すとすっと静かに正座をして楓花と彷徨の隣に気づくまもなく座るといなくなっていた筈の桜雅が戻ってきていて両手で空を切るような音で二つ鳴らす

「そのままでもいいよ、全員揃ったから始めようか。おはようございます」

まばらに返ってくる挨拶にどこか満足げにキラキラとした雰囲気を漂わせる太陽の様な桜雅はこくこくと頷いた

「それでは出席確認をします。君たちの名前を一人ずつ呼ぶから返事をしてもしなくてもいいから何かしらの返答をしてくれると私的には嬉しい。どうか協力をよろしく頼むよ」

そう言いながら空中に画面を映し出して左右スライド式の出席表を出す

「一番.朝霧楓花さん。ふうか読みであっているかい?」

「はい!大丈夫です」

緊張しながら手を小さくすっと上げて言葉という形にして声に出して繋げると更に満足そうな笑みを口元に浮かべて視線が糸に繋がったように交わる

「いい名だ…そして元気があって宜しい。それでは二番」

次々と当てられていく生徒の名前と個々に違う返答の仕方や声色の違い、そして相互に違う先生と生徒間のコミュニケーションに応えるように日の光が優しく教室に差し込み、光の矢の様に点呼が終わりぴこんという音と共に出席表が閉じられる

「学校初日全員揃って君たちに会えて私はとても嬉しく思います。それでは今日のこれからの予定の発表をしたいと思います。今日はこれから校内を一通り回ります。恐らく今日はそれだけで一日終わると思うので疲れたり途中で体調が悪くなったりしたらその都度伝えてください。持ち物は特にはありませんが各自に任せます。話はこれで終えますが、何か質問はありますか?」

しんと静まり返った中一つの手がまっすぐに上がり、桜雅が手の主の名前を呼ぶ

「先生の事が知りたいです。互いに知っておく必要があると思うので」

真顔ですらすらと言葉を若干低めの聞き取りやすい声で話す注連野閏にミステリアスな微笑みを浮かべながら興味深そうな表情を浮かべる桜雅

「ほほう…いいところに目が行くじゃないじゃないか注連野。互いの情報は確かに共有していて損はない。名前は坂田桜雅(さかたおみ)。坂田は坂田金時の坂田におみは桜に雅と書いておみと読む。誕生日は1月12日。血液型はO型。担当教科は社会科で部活は弓道部顧問。趣味は運動全般。好きな食べ物はジャンクフード。こんな感じでどうかな?」

「坂田金時という言葉をお聞きしましたがご子息ですか?」

「へぇ…勘付くのが早いな…まぁそんな所だ」

「成程…ありがとうございます」

楓花が話の展開があまりにも早くついていけずに頭の上にはてながいっぱい出てきてショートして固まっていると鞘が肩を二回ほど叩く

「朝霧さん…大丈夫ですか?何やら意識が遠のいていたように見受けましたが…」

「だ、大丈夫です…ちょっと話の展開があまりにも早すぎてついていけなくて…坂田金時とかご子息って一体…」

「童話の金太郎のモチーフになった平安時代中期鬼斬りの武士です。稀に歴史上の偉人の子孫やご子息がいる場合があり、坂田金時の子孫がどうやら桜雅先生の様です」

「そ、それってすごいことじゃないですか…」

「まあね~家系的には確かにほかの者からすれば凄いかもしれないが、ご先祖がすごいだけで自分にそれ以外は特に何もない。節分の時に豆まきをしなくていい位だな!ありがたいとするのならば。さて10分間休憩をはさんでそこから校内案内を始めるので各自準備を頼んだよ。それでは休憩」

→→→ #27に続く

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