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連載小説 「壬之御門奇譚(おおいのみかどきたん) (Act. 1)」  ♯2

更新日/2023.01.31

時は矢の如く過ぎていき、一か月後になった。

そわそわするものの制服に着替えて迎えを知らせる鐘がなるのを小鹿の様に震えた体で待つ。今日の天気はこの先の事を知らせているのか音がかき消されるほどの大雨だった。

天気予報を伝える黒い鳥が言っていたことと真逆の天気になり気分がだんだんと曇天の色の如く暗く靄がかかったかのように段々と沈んでいき、思考が悪い方へと流されそうになった所でピンポーンと音が聞こえ光射す方へと戻され背筋がビクッとしたものの急いでバッグを持って廊下を駆け抜けてバランスを崩しそうな片足立ち状態で靴を左右に履いて緊張で震える物のガチャリと扉を押すと、見慣れない制服を着た蒼い髪の整った身なりの男が振り返って綺麗に一礼する。あっけにとられ固まっていると顔を上げた男がニコッと音が出そうな笑顔で口を開く

「朝霧楓花さん…かな?」

「は、はいそうですが…?」

「壬之御門学園からお迎えに上がりました。準備はいいかい?」

ニコッと相変わらずしているものの優しくどこか力強く聞いてくるその声に励まされたのかどこからか力が湧いてくる。目をゆっくり閉じてふうと一息ついて一気にばっと目を開いて頷く

「はい、出来ています。よろしくお願いします。」

「いい覚悟だ。よし、では行こうか?」

そう言ってどうぞ?促すように後部座席の扉が開かれお礼を一つ零してそのまま座りシートベルトを締めてふかふかの外見とは違い広くなっている中の座席に一つ座る。外から見たら普通の車なのに中はリムジンの如く広くなっていて驚きと圧倒される和がべーすになっている美しい内装に目を奪われている最中車が少し揺れて運転手さんが運転席に座ってインカムのような物を耳につけながらちょっと待ってねと背中越しに言うので小さく頷くとありがとうと一言零して前を向く

「おはようございます天、朱雀です。今朝霧楓花さんと合流したので今から向かいます。彼女はどちらに?……かしこまりました。ありがとうございます失礼致します」

会話していた時とは真反対の真剣そうな声で電話越しにペコペコと頭を下げていたもののインカムを一度タップするとふーっと一息ついて緩やかに振り返りお待たせしました。と先ほどまでの笑顔で告げてくる

「それじゃ、出発します。あぁ、そうだ目を瞑っててね?」

ん?目を瞑る?車で出発するのになぜ目を瞑らなければならないのか?理解が追い付かなかったが言われるままに目をぎゅっと瞑る。

「理解が早くて助かるよ、いいって言うまではそのままね?目が溶けちゃうかもしれないからさ?」

今、とんでもなく怖いことを言ったような気がするが目を閉じたままわかりましたとだけ返すと一瞬目を瞑ってでもわかるような眩しさと心地よいほどの温かさに包まれてそこから段々と熱くなって再び落ち着く様な丁度良いような温度に変わって凍てつくような寒さへと変わるって車に乗った時と同じ五感で感じた状態に戻った所でシンと嫌な程シンと静まり返って何も聞こえなくなった

「お疲れ様、もう開けていいよ」

今感じた経緯は何なのだろうか少し目を開けるのが恐ろしく感じる物の恐る恐る目をゆっくりと開けると何一つ変わらない車の中で運転手さんが知らない間に車から降りていたことは正直驚いたものの自分にひとまず何もなく視界も良好でほっとしていると窓の外側から優しさも感じられるような品があるノックが3回聞こえてどうぞ?と少し後ずさりながら返すとゆっくりと車の扉が開けられて運転手さんともう一人また見慣れる見たことのないような制服を着ている凛とした雰囲気の女性が立っていた。鞄を右手に車に掴まりながらゆっくり地面に足を落とし目の前に大きな影があるなと思い見上げると大きな門があってその圧と迫力に圧倒されて朱色の門の美しさに引き込まれる。

「朱雀、この子か?」

「ご明察、入学許可が下りて今日面接の子だよ。僕ができるのはここまでだからさ?後は頼んだよ稲童丸(いなどうまる)。面接は扇の間でやるみたいだからそこまでの案内宜しくね」

「承知した。ここまでの案内ご苦労様感謝する朱雀」

「いいのさー僕のお役目でもあるし、その言葉が貰えるだけで頑張れる。朝霧ちゃん」

「!…は、はい!すみません」

はっとして視界を声のする方へと向けて急ぎ足で二人のいる方へと走る

「面接頑張ってね?緊張せずにリラックスして!平常心を忘れずにいつも通りでいい、自分を大切に素直にね」

そう言って車にゆらゆらと歩きながら自分に向ってのエールと緊張を解すために行ってくれているその言葉に胸が温かくなって少し前のめりになってはっとする

「あ、ありがとうございました!朱雀さん!」

こんなこと普段はなかなか言えない口にすることもできない自分が言えることに対して驚きが隠せないのもあったがそれに対して手をひらひらと振替してそのまま車に戻っていく姿を口元が緩んだ温かい気持ちのまま見送ると。隣からコホンと咳払いが聞こえてハッと我に返りすみませんと頭をぶんぶん下げる

「いや、大丈夫だ案ずるな。そして頭を上げてくれないか…これでは私が何か変なことをしてしまったようじゃないか」

女性だがどこか落ち着いて凛とした雰囲気と声が戸惑いを見せたものの表情は特に変わっておらずすみませんと申し訳なさそうに言って頭を上げる

「よし、朝霧楓花さんだったな?」

「は、はい」

「壬之御門学園高等院2年稲童丸薫です。面接会場まで案内を担当します。」

「ありがとうございます。よ、よろしくお願いします。」

頭を深々と下げるとこちらこそ短い時間ではあるがよろしく頼むと声が聞こえ頭を上げるとでは行くかと言いながら花の紋が書かれた水晶板を門の中心にある空洞にはめ込む

「どなたですか?」

→→ #3に続く

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