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連載小説 「壬之御門奇譚(おおいのみかど きたん)」 Act.1 #7

更新日/2023.02.25

頭が脳内も真っ白になって思考がショートして固まる。それと同時に重荷が肩の荷が一気に下りた感覚になった。スイスの草原にいるような何か景色がきれいな空気がおいしい場所にいるようなそんな感覚と心地よさとそれと反して熱くなって震える視界と心臓が事の大きさと喜びと達成感を物語っていた。言葉に詰まってうまく言葉が発することができない…目が海になっていたのか絶え間なく波が雫として零れ落ちる。のを他から見られないように自分の前に片膝をついてよく頑張ったとでもいうかのように撫でる大きな手。その心と手の温かさが更に波を加速させてとめどなく流れる

 

「どれほど辛かっただろう。どれほど背負ってきたのだろう…こんな小さな背中でどれほどの事を乗り越えてきたのだろうな…それでも君はその日々を乗り越えて頑張って耐え忍んで今日にたどり着いた…よく頑張ってきたじゃないか…自分を誇りなさい。ここまで頑張って生きてここにたどり着いた自分を」

「あ、…りがとう…ご…ざいます」

ジンと胸に響いてくる一言一句に少し自信がついて涙を少し乱雑に袖で拭い少し赤くなった腫れた顔で大丈夫だという意味を込めて頷くと快く微笑んで安心したのか目前の男がほっとした表情で口を開く

「君は、壬之御門学園の新入生になるわけだが…君に決めてもらいたいことが複数ある」

「何を決めればよいのですか?」

「まずは君が着る制服と寮の部屋のデザインだ」

制服を決めるとはどういうことなのだろうか…制服と言えば大抵今までは学校側が完全に指定したものを着るはずではなかったのだろうか?

「あ、あの…制服を決めるとは?」

「壬之御門学園はね、他の高校とは違い、個人の個性を尊重するため基本的に制服のデザインは生徒がすることになっている。指定があるとするならば校章を一点だけでいいから入れる事と過度な露出は控えること。それだけしか決まりはない…それ以外は個人の意思と個性の尊重を重視するためそれ以外は自由なんだ…だから君がこれから生活する寮の部屋のデザインも髪色もメイクも自由だし髪型も何もかも自由なのさ…デザインに困った場合後程学校側から連絡がいく。先輩たちやデザイン系の方たちとも相談ができるからそこで相談するのもありだし、自分で決めるのもありだよ」

つくづく実感させられるあまりにも変わった学校だとただ変わっているだけではなく凄いところなのだろうなと…呆気にとられるし凄すぎて何も言えなくなる

「成程…凄いんですね壬之御門学園初めて聞きましたこんな学校」

「他には絶対ないだろうからね…天は確かに変わった方だ…ただそれにはきちんとした理由がある。生徒たちの感情や価値観も個性も違うのをだれよりも知っていらっしゃるからこそ天は学校のシステムも変えたし自由になされた…個性や生徒たちらしさをつぶす学校なんて学ぶ場所にはふさわしくない…学校は楽しまなければ長続きするわけでもない…私もそう思うのだよ」

確かにその通りなのだ。楽しくなければモチベーションがなければ勉強も学問も楽しいわけがない。個性は簡単につぶせるし右に倣えと言えばみな大抵は先人がそうならば後に続くものも強制的にそのあとに続き反論を述べるものは隠蔽されるかバッシングを必ず受けることになるだろう。

「その通りですね…確かにその通りです」

「嗚呼…すまない話がそれてしまったね…まずは制服と部屋のデザインを決めて欲しい。決まり次第そのデザイン案を後程送信する学校のメアドに添付して学校側に送ってほしい」

「わかりました」

「教科書などは揃えずとも大丈夫だ。鞄に関しても朝霧さんの自由だから好きなもので登校してきてくれ。後は基本的に入学すると寮生活になるので洋服や生活に必要な物は3月25日に荷物を受け取りに来るのでそこまでにまとめておいてほしい。スマホやパソコンに関してだが要塞都市内に持ち込みは出来なくなる。出来ない代わりにこれにデータを移しておいてほしい」

そう言いながら胸ポケットから装飾されていた箱を出して開くとUSBの様な形のガラス状の棒を渡される。

「これは…なんですか?」

「自動式記憶媒体…世間一般で言うところのUSBだよ。これはスマホでもパソコンでも使えるようになっている。使うときにはパソコンの場合はパソコンと、スマホの場合は必ずスマホの機種を使用する前に唱えること。唱えると機種に応じた形に変化して差込口に挿入出来るようになる。差し込むと記憶媒体やデータが自動で君が使う予定のスマホやパソコンへと転送される仕組みだ。スマホやパソコンの持ち込みができない代わりに学園側が一台ずつ配布をするから安心してほしいし、やり方もいたって簡単にできるから安心してくれ」

「ほ、本当にこのガラスの棒で自動的に転送されるんですか?」

「驚くのも無理もない話だね…普通こんな棒でできることではないからね…今は至ってこんな所だろうか…後は聞いておきたいことはあるかな?」

そう言いながらトランクに鍵をかけて足元に置いて優しそうなまなざしで目線と姿勢を合わせてくる。

「あの学校内は一人になれる部屋というか空間はありますか?」

「もしかして朝霧さんは集団や複数人数がいるのが苦手ですかな?」

「はい…なんというかいてもいいのですただ、複数人の中の孤立というかあまり多すぎても浮いてしまったりするのが苦手で…落ちたときとか一人になりたいときもあるので」

「成程…確かに完全なる孤立よりも複数人数や集団の中の孤立の方が孤立感はまして強くなるもの…ご安心下さい。各学年事に5部屋程憩いの場といいまして一人で休憩もしくは休息をとる部屋があります。各先生に一言申告があればいつでも使えるのでご自由にお使いください。」

ほっとしたと同時にとてつもない安心感に包まれ感謝の言葉を一つ言い質問はこれで大丈夫です。と安どした表情とともに伝えると納得したかのように深く男は頷きトランクを左手でそっと持ち上げ帽子を被る

「では、入学式の日をお伝えします。入学式には4月8日です。入学式と同時に寮生活もスタート致しますので後程届くメールに書いてある物を持参の上午前9時頃お迎えに上がりますのでお待ちください。また再度お伝えしますが、荷物は3月25日に取りにまいります。制服とお部屋デザインの締め切りは3月20日になります。今言った内容はこちらにまとめてございますのでこちらをご確認の上ご準備の程何卒よろしくお願いいたします」

そう言って綺麗にすっと一礼をすると封筒をもう一通渡しそれでは本日はこれにて失礼いたします。入学式お会いできるのを楽しみにしております。と微笑んで伝えると彼は黒い車に乗って去っていくのをせめても伝えられなかった感謝の気持ちが届くようにとの願いを込め車のエンジン音が遠のくまで頭を下げた。

 

それからあっという間に時は流れて制服が届いて、部屋ががらんと空白になり待ちに待った入学式当日になった。制服は白い袖が七分丈のブレザーにヒスイ色のループタイと黒ベースのダブルボタンのベストに長めのロマンティック状のスカートで校章は襟元にバッチ状の物にしたて靴は紐靴の革靴にした。ずっと憧れていたロリータの様な中世のドレスの様な制服見ているだけでも気分が上がるが着ると更に気分が上がるとてつもなく幸せで天にも昇れる様な今なら空にも飛んでいきそうな気分だった。鞄も合うような学徒の鞄にして高まる気分を、息を整えて目を瞑って落ち着かせる。沈黙が流れてシンと静まり返るそれでさえ心地よいと思わせるほどの朝だった。

祝福の来訪を知らせる鐘の音が聞こえて靴をそのまま履きコツンと一度鳴らして目をゆっくりと開いて自分の部屋と家にゆっくりと今までの感謝を含めて頭を下げ、閉じていた目を開いて口元には笑みが一つこぼれる

 

「行ってきます」

→→→ #8へ続く

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